2022年1月9日「盗んではならない」加山献牧師

【八番目の戒め】

 十戒の八番目の戒めは「盗んではならない」という戒めです。「盗んではならない」ということは改めて言われなくても、常識的に誰もがよく分かっていることのように思われます。しかし「盗み」という問題は、どういうわけか社会からなくなりません。テレビやインターネットのニュースでは強盗や詐欺、贈収賄などのニュースが連日のように流れています。

 かつてアウグスティヌスは私たちの内側に潜む「罪」こそが「盗み」の根本原因なのだと語りました。「盗んではならない」という戒めはとてもシンプルな教えですが、私たちの内側にある「罪」に対して、抵抗しながら生きる生き方を教えています。私たちに十戒が与えられている理由のひとつは、私たちに備えられている良心を最大限に呼び覚ますためであり、私たちをより正しい道に導くためなのです。

【与える者としての召し】

 「盗むことなかれ」という戒めの背後には、「あなたは与える者として生きていきなさい」という積極的なメッセージがあります。私には与えることができるようなものはありません、と感じられる方もおられるかもしれません。しかし、私たちの誰もが持っているものがあります。それは「命」です。命こそが私たちが世に対して与えることができる最大のものです。

 私たちはこの命を神様に捧げて生きることができ、隣人に捧げて生きていくことができます。「使命」という漢字は、「命を使う」と書きます。「使命」という言葉には、私たちが、与えられたこの命を何のために使っていくかというチャレンジが含まれているのです。私たちはこの命を使って、誰かを励ますことができ、誰かを慰めることができます。この世界に与えることができるものを、私たちも持っています。 一つの言葉をご紹介します。アメリカの16代大統領リンカーンの言葉です。「私はひとつの痛切な願いを持っている。それは、私がこの世界に住んだが故に、少しだけ世の中がよくなったということを確かめられるまで生きたいものだ。」