旧約聖書のレビ記25章には“ヨベルの年”という制度が定められています。新約聖書に親しんでいる私たちにとってあまり馴染みのない言葉ですが、調べてみると非常に興味深い社会制度であったことがわかります。
“ヨベルの年”は50年に一度やってくる記念すべき年として定められていました。それは第一に、貧富の格差をなくすための経済のシステムでした。第二に、貧しい人々に希望を与えるための社会的な仕組みでした。
この年には、すべての借金が帳消しになり、すべての奴隷が解放され、土地や家などの不動産が元々の所有者のもとに無償で返還されることとなっていました。当時のユダヤでは、借金をしたり、先祖代々受け継いだ土地や家を売ったりする、ということは非常に惨めで恥ずかしいことと考えられていました。様々な事情により貧しくされた人々が泣く泣く自分の所有する大切なものを手放し、お金を借りたのです。
土地を売っても生活がままならない場合は、身売りをしなければなりませんでした。つまり奴隷として誰かの家に雇ってもらい、養ってもらうしか生きる方法がない人々がいたのです。
しかしながら、そのように貧しくされてしまった人々にもひとつの希望がありました。50年に一度、“ヨベルの年”がやって来るのです。この年にはすべての奴隷が解放されて、故郷に、家族のもとに帰ることができました。
「この五十年目の年を聖別し、全住民に解放の宣言をする。それが、ヨベルの年である。あなたたちはおのおのその先祖伝来の所有地に帰り、家族のもとに帰る。」(レビ25章10節)
イスラエルに王政がはじまり、バビロン捕囚を経て、いつの間にかこの制度は廃止されて、幻のイベントとなってしまいました。しかし民衆はいつか神からのメシア(救い主)が現れて永遠の解放の時が訪れることを待ちわびるようになりました。そして時が満ちて、主イエスは罪と死の縄目から人類を解放する救い主として世に来られたのです。